キーワード:アンペールの法則、ファラデーの法則、直流、交流、変圧器の原理、交流使用の理由

アンペールの法則とファラデーの法則

これまでの記事で、発電所での昇圧需要家手前での降圧の重要性が分かりました。
今回は『じゃあどうやって電圧を上げ下げするの?』という疑問に答えましょう。

電圧を上げ下げするということは、見方によっては『ある電気から別の電気へ変換する』ことと捉えることができます。
ここでこれまでに出てきた法則を思い出してみましょう。
まずはアンペールの法則ですが、電流の周りに磁界が発生するという法則でしたので、電気から磁気に変換していると言えますね。

次にファラデーの法則ですが、磁束の時間変化に応じた誘導起電力が発生するという法則でしたので、磁気から電気に変換していると言えます。

ということは、アンペールの法則とファラデーの法則を組み合わせれば、電気⇒磁気⇒電気となり、一度磁気に変換するというワンクッションを置くことで、ある電気から別の電気への変換が実現できそうです。


直流と交流

ここでファラデーの法則の注意点ですが、磁束の『時間変化』に応じた誘導起電力が発生するのですから、磁束の大きさが一定だと何も起こりません。
一方アンペールの法則は、電流が流れているとき、その電流が一定でも時間変化していても周りに磁界が発生します。
したがって、時間変化する電流を流すことで時間変化する磁束を生み出し、それを利用して誘導起電力を発生させる方法が実現できそうですね。

ここでいう『大きさが一定』の電圧や電流のことを直流『時間変化する』電圧や電流のことを交流と呼びます。
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変圧器のしくみ

ここで、以下のような図を考えてみましょう。

この図で左側から交流の電圧をかけると、一次側(左側)のコイルには交流の電流が発生します。

そうすると一次側のコイルはアンペールの法則により磁束を発生させます。
鉄は空気と比較してかなり磁界を通しやすいという性質があるため、発生した磁束はほとんどすべてが鉄心の中を通ります。

この磁束が二次側のコイルのループを貫くことでファラデーの法則により誘導起電力が発生し、二次側の端子にも電圧がかかります。

これが変圧器の大雑把なしくみです。


電圧の大きさを調整する

それでは、二次側に誘起される電圧の大きさは、どのように決まるのでしょうか?

磁束がループを貫くことによって誘導起電力が発生しますが、このループの巻数が2巻、3巻と増えると、ループ1巻ごとに同じ大きさの誘導起電力が発生するため、端子間には2倍、3倍という電圧が発生します。


鉄心を通る磁束をΦとすると、その時間変化はdΦ/dtで表すことができ、これがすなわち1巻のループに発生する誘導起電力の大きさになります。
ちなみに、磁束は一次側のループも貫いているため、一次側にも誘導起電力が発生していて、これが電源の電圧に等しいと考えることができます。

すると、一次側の巻数N1二次側の巻数N2の場合、一次側と二次側のコイルに発生する誘導起電力V1、V2はそれぞれ、

V1 = N1 × dΦ/dt
V2 = N2 × dΦ/dt

となります。
この2つの式を変形すると、V1/V2 = N1/N2という関係が導かれます。
つまり、一次側の電圧と二次側の電圧の比は、一次側の巻数と二次側の巻数の比に等しくなるということです。


具体的には、例えば一次側の巻数N12巻で、二次側の巻数N25巻の変圧器がある場合、一次側にV1 = 10(V)の電圧をかける場合の二次側の電圧V2を求めます。

先ほどの式に各値を代入すれば、

V1/V2 = N1/N2
∴V2 = V1×N2/N1 = 10×5÷2 = 25(V)

となるため、一次側で10Vだった電圧は二次側で25Vまで上昇します。
その上昇の割合が巻数N1とN2の比率で決まるということです。


したがって、発電所での昇圧用変圧器N1 < N2とし、逆に各変電所や柱上変圧器などの降圧用変圧器N1 > N2とすればよいのです。


交流が使われている理由

以上のように、変圧器の構造は非常に簡単で、鉄心とそこにぐるぐる巻きにしたコイルが2つあればよく、しかも電圧の大きさは巻数を変えることで簡単に調整できます。
こんな簡単な構造で電圧の上げ下げができるのは、先ほど説明した通り、使っている電気が交流で時間変化するからです。
また、詳細は後日説明しますが、発電機にしてもモーターにしても交流の方が扱いやすいということもあり、さらに系統内に事故が発生した場合に交流の方が電気を遮断しやすいということもあるため、現在の日本の電力系統はほとんどが交流で運用されています。




まとめ

①直流と交流:
直流 ⇒ 大きさが一定の電圧・電流
交流 ⇒ 大きさが変動する電圧・電流

②変圧器の構造:
鉄心+2つのコイル

③変圧器のしくみ:
一次側に交流電圧印加
⇒ 磁束発生
⇒ 磁束が二次側コイルに鎖交
⇒ 二次側に誘導起電力発生

④二次側電圧:
巻数比で決定(V2 = V1×N2/N1)

⑤交流の採用理由:
変圧器で容易に電圧の大きさを調整可能
発電機・モーターなどが扱いやすい
事故電流が遮断しやすい


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