キーワード:マクローリン展開、微分、べき乗、階乗、近似、sin x・cos x・tan x・exp xの電卓での計算
容易に計算できない関数
一方、xの二乗や三乗の計算なんかは、xの値を代入して計算すれば求められますよね。
そうであれば、計算の難しいsinやcosを、なんとかして計算が簡単なxの何乗(xのべき乗と言う)という形で表すことはできないでしょうか?
sin xをxのべき乗で表す
結論から言えば、できます!
どんな形になるかは現段階では見当がつかないので、とりあえず以下のように仮に置いておきましょう。
sin x = A0 + A1 x + A2 x^2 + A3 x^3 + …
両辺にx = 0を代入すると、sin 0は0ですから、A0 = 0ということが分かりますね。
この調子でA1やA2も次々と求められればいいのですが、そのためにはくっついているxやx^2が邪魔です。
てことでxで微分しちゃいましょう。
(sin xの微分がcos xなのは大丈夫ですよね?)
cos x = 1×A1 + 2×A2 x + 3×A3 x^2 + …
両辺にx = 0を代入すると、A1 = 1÷1 = 1となります。
同様にさらにxで微分すると、
-sin x = 2×1×A2 + 3×2×A3 x + …
両辺にx = 0を代入してA2 = 0÷(2×1) = 0となります。
もう一回くらいやっておきましょう。
-cos x = 3×2×1×A3 + 4×3×2×A4 x + …
両辺にx = 0を代入してA3 = -1÷(3×2×1) = -1/6です。
だいたい規則性は見えてきましたよね?
偶数回微分したときは左辺にsin xが出てくるため、係数Anは0になります。
奇数回微分したときは左辺にcos xが出てくるため、+1、-1と交互に切り替わり、Anにはn!が付いてきます。
(n!はnの階乗(カイジョウ)といい、例えば5!は5×4×3×2×1のこと。)
つまりsin xは以下のように表すことができます。
何次まで計算すればいいの?
とりあえずsin xをxのべき乗で表すことはできました。
しかしこの式、無限に続いてます。
確か当初の目的が『sinやcosなどの計算困難な関数を、計算しやすいxのべき乗で表したい!』ということでしたよね?
なのに無限に続くようでは、計算しやすいどころか永遠に計算が続いてしまいます。
さて困った。
こんなときは、無限に続くのを途中でぶった切ってしまおう!
これを数学では『近似』と言います。
とりあえず、第1項(1次式)まで近似した場合はどうなるか?
全然違いますね。
確かに原点であるx = 0では等しいですが、そこから少しでもずれると値が大きく異なってきます。
では第2項(3次式)までだとどうでしょう。
さっきよりは近づきました。
しかしまだまだ遠いですね。
続いて第3項(5次式)。
かなりいい感じになってきました。
もう一歩!という感じです。
念のため第4項(7次式)。
かなり近いんじゃないでしょうか?
じゃあsin xの近似は第4項までにしましょう!
・・・と安易に考えてはいけません。
第4項まで計算するなんてめんどくさすぎます。
何度も言いますが、そもそもの目的を思い出しましょう。
出来る限り計算は簡単にしたいのです。
90°以上の角度の場合、例えば100°だとすると、sin100°はsin80°やcos10°と等しくなりますね。
グラフを見るとx = 0に近い方が、近似の次数が小さくても正しい値に近くなる傾向があるため、sin100°なんてものはcos10°として計算してしまえばいいのです。
(後述しますが、cosもxのべき乗で表すことができ、sinと同様にxが0に近いほど近似値と実際の値との誤差が小さくなります。)
出来る限りxの値が0に近いときに使うという前提に立てば、私は第2項までの近似式で十分ではないかと思います。
マクローリン展開
以上のように、x = 0の点における微分の値を用いて、あらゆる関数をxのべき乗の形で表す手法を『マクローリン展開』と呼びます。
マクローリン展開は一般に次のように表されます。
ちなみにx = aにおける微分の値を用いてxのべき乗の形で関数を表す手法を『テイラー展開』と呼び、以下の式で表されます。
このテイラー展開の式にa = 0を代入すれば先ほどのマクローリン展開の式と等しくなるため、テイラー展開はマクローリン展開をより一般化した形であることが分かります。
逆に、あらゆる関数をsinやcosで表す『フーリエ展開』という手法もあり、これも電気工学の分野ではよく使われているのですが、今回の電卓テクニックの意図に反する(より計算しにくい形で表すことになるため)ので省略します。
ということで、sin xだけでなくcos xや指数関数のexp x(e^x)についても、マクローリン展開によって以下のような計算しやすい形に変換できます。
(ちなみにtan xはsin xとcos xを求めたあと、tan x = sin x/cos xによって計算するのが楽でしょう。)
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まとめ
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