キーワード:マクローリン展開、微分、べき乗、階乗、近似、sin x・cos x・tan x・exp xの電卓での計算

容易に計算できない関数

以前書いた通り、電験では『普通の電卓』しか使えません。
しかしそんなことはお構いなしに、本当に様々な計算問題が出てきます。
したがって、普通の電卓でいろいろな計算が出来るテクニックを持っておけば、それは大きな武器になるはずです。
(テクニックだけを知りたい場合は、『総まとめ』の記事をお読みください。)

例えば、sincosについて。
0°、30°、60°、90°などの代表的な角度におけるsinやcosの値は覚えている人も多いでしょう。
しかし15°の場合は?25°は?となってくると、お手上げという人も多いのではないでしょうか。

一方、xの二乗や三乗の計算なんかは、xの値を代入して計算すれば求められますよね。

そうであれば、計算の難しいsinやcosを、なんとかして計算が簡単なxの何乗(xのべき乗と言う)という形で表すことはできないでしょうか?


sin xをxのべき乗で表す

結論から言えば、できます!
どんな形になるかは現段階では見当がつかないので、とりあえず以下のように仮に置いておきましょう。

sin x = A0 + A1 x + A2 x^2 + A3 x^3 + …

両辺にx = 0を代入すると、sin 0は0ですから、A0 = 0ということが分かりますね。
この調子でA1やA2も次々と求められればいいのですが、そのためにはくっついているxやx^2が邪魔です。

てことでxで微分しちゃいましょう。
sin xの微分がcos xなのは大丈夫ですよね?)

cos x = 1×A1 + 2×A2 x + 3×A3 x^2 + …

両辺にx = 0を代入すると、A1 = 1÷1 = 1となります。
同様にさらにxで微分すると、

-sin x = 2×1×A2 + 3×2×A3 x + …

両辺にx = 0を代入してA2 = 0÷(2×1) = 0となります。
もう一回くらいやっておきましょう。

-cos x = 3×2×1×A3 + 4×3×2×A4 x + …

両辺にx = 0を代入してA3 = -1÷(3×2×1) = -1/6です。

だいたい規則性は見えてきましたよね?
偶数回微分したときは左辺にsin xが出てくるため、係数Anは0になります。
奇数回微分したときは左辺にcos xが出てくるため、+1、-1と交互に切り替わり、Anにはn!が付いてきます。
n!nの階乗(カイジョウ)といい、例えば5!は5×4×3×2×1のこと。)

つまりsin xは以下のように表すことができます。


何次まで計算すればいいの?

とりあえずsin xをxのべき乗で表すことはできました。
しかしこの式、無限に続いてます。
確か当初の目的が『sinやcosなどの計算困難な関数を、計算しやすいxのべき乗で表したい!』ということでしたよね?
なのに無限に続くようでは、計算しやすいどころか永遠に計算が続いてしまいます。

さて困った。
こんなときは、無限に続くのを途中でぶった切ってしまおう!
これを数学では『近似』と言います。

とりあえず、第1項(1次式)まで近似した場合はどうなるか?

全然違いますね。
確かに原点であるx = 0では等しいですが、そこから少しでもずれると値が大きく異なってきます。

では第2項(3次式)までだとどうでしょう。

さっきよりは近づきました。
しかしまだまだ遠いですね。

続いて第3項(5次式)

かなりいい感じになってきました。
もう一歩!という感じです。

念のため第4項(7次式)

かなり近いんじゃないでしょうか?


じゃあsin xの近似は第4項までにしましょう!
・・・と安易に考えてはいけません。
第4項まで計算するなんてめんどくさすぎます。

何度も言いますが、そもそもの目的を思い出しましょう。
出来る限り計算は簡単にしたいのです。

90°以上の角度の場合、例えば100°だとすると、sin100°はsin80°やcos10°と等しくなりますね。
グラフを見るとx = 0に近い方が、近似の次数が小さくても正しい値に近くなる傾向があるため、sin100°なんてものはcos10°として計算してしまえばいいのです。
(後述しますが、cosもxのべき乗で表すことができ、sinと同様にxが0に近いほど近似値と実際の値との誤差が小さくなります。)

出来る限りxの値が0に近いときに使うという前提に立てば、私は第2項までの近似式で十分ではないかと思います。
 



マクローリン展開

以上のように、x = 0の点における微分の値を用いて、あらゆる関数をxのべき乗の形で表す手法『マクローリン展開』と呼びます。
マクローリン展開は一般に次のように表されます。

ちなみにx = aにおける微分の値を用いてxのべき乗の形で関数を表す手法『テイラー展開』と呼び、以下の式で表されます。

このテイラー展開の式にa = 0を代入すれば先ほどのマクローリン展開の式と等しくなるため、テイラー展開はマクローリン展開をより一般化した形であることが分かります。

逆に、あらゆる関数をsinやcosで表す『フーリエ展開』という手法もあり、これも電気工学の分野ではよく使われているのですが、今回の電卓テクニックの意図に反する(より計算しにくい形で表すことになるため)ので省略します。

ということで、sin xだけでなくcos xや指数関数のexp x(e^x)についても、マクローリン展開によって以下のような計算しやすい形に変換できます。
(ちなみにtan xはsin xとcos xを求めたあと、tan x = sin x/cos xよって計算するのが楽でしょう。)




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まとめ

①sin xの場合:

②cos xの場合:

③tan xの場合:
tan x = sin x/cos xにより算出 

④exp x(e^x)の場合:



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