キーワード:同期発電機、回転界磁型、電磁石、鉄心、界磁巻線、励磁、励磁電流、スリップリング、ブラシ、多極化、回転数、周波数
難易度:★★★☆☆(三種レベル)

スリップリングとブラシ

今回から同期発電機の理論について解説していきます。
大型の発電所で主に使われている、回転界磁型の同期発電機について考えてみましょう。

回転界磁型の同期発電機とは、前回説明したように、回転子が界磁(磁界を発生するもの)となるような構造の同期発電機のことです。

上の図では界磁として永久磁石が使われていますが、発電所などの大型の同期発電機には一般に電磁石が用いられます。
なぜならば発電機端子電圧の大きさは界磁が発生させる磁束密度の大きさに比例するので、できるだけ磁束密度を高めたいのですが、永久磁石だと限界があります。
そのため、励磁電流を大きくすることで永久磁石を超える磁束密度が得られる電磁石が用いられるのです。


また他にも、永久磁石はその種類によって磁束密度が決まるため、磁束密度の大きさを変化させられませんが、電磁石ならば励磁電流を変化させることで簡単に磁束密度を変化させることが可能であることが挙げられます。


詳細は後述しますが、負荷の力率の変動に対応するには、発電機の界磁を制御する方法が有効なので、界磁として電磁石が使われているのです。


電磁石を構成するには、下の図のように、鉄心界磁巻線と呼ばれる導線を巻き、そこに外部から直流電源を接続して直流電流を流し、 鉄心を励磁する必要があります。


しかし電磁石を回転子として利用する場合、直流電源を単純にそのまま繋げて回転させると、当然ですが導線がねじれてしまいます。


そこでスリップリングブラシを用いて、どれだけ回転してもねじれないような構造としています。


上の図のように、導線の両端に1つずつスリップリングを接続し、その外周をブラシによって常に接触させれば、界磁巻線に電源が接続されて永続的に電流を流すことが可能となるのです。

しかし回転するスリップリングにブラシが常に接触しているため、経年によってブラシはすり減ってしまいます。
したがって定期的なメンテナンスが必要となるデメリットがあります。


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磁極の数と回転数の関係

電磁石の円周上の各位置における磁束密度の分布は以下のグラフのように正弦波になると仮定できます。
(実際には正弦波に近づくように界磁巻線の巻き方を工夫しています。)


以前説明したように、発電機が生み出す電圧の周波数は、回転子の回転速度に比例します。
今までの電磁石はN極、S極ともに1つずつの計2極の電磁石だったため、回転子が1回転する間に磁束密度も1サイクルしていました。
例えば50Hzの電圧というのは、最大値⇒最小値⇒最大値という変化毎秒50サイクル行われることを意味します。
したがって2極電磁石を用いた発電機が50Hzの電圧を生み出すためには、回転子は毎秒50回転しなくてはならないのです。

毎秒50回転というのはかなりの高速回転ですよね。
火力発電のタービンなどはものすごい勢いで回転してるようなイメージがありますが、水力発電の水車なんかは果たして1秒間に50回転も実際に回っているのでしょうか?

実際にはそんな高速で回転していません。
しかし回転子の構造を工夫して、ゆっくりの回転でも50Hzの電気が得られるようにしています。
その工夫とは、下の図のように電磁石多極化することで、回転子が1回転する間に磁束密度は数サイクル変化(図だと4極で2サイクル)するような工夫です。


これによって、例えば4極電磁石ならば秒速50回転の半分の秒速25回転で50Hzの周波数の電気が得られ、20極電磁石ならば秒速50回転の10分の1の秒速5回転で50Hzの周波数の電気が得られます。
これを式にすると、


と表すことができます。
ただしn1分あたりの回転数[rpm]f周波数[Hz]p磁極の数です。

さらっとrpmという単位を書きましたが、これは1分あたりの回転数の単位rotation per minuteの略です。
ちなみに1秒あたりの回転数の単位はrpsといい、同様にrotation per secondの略です。

この式が頭に入っていれば、ダムや水力発電所に見学に行って、下のようなパネルを見たときに『ここは50Hzのエリアなので、回転速度が500rpmということは、120×50/500=1212極の発電機を使用しているんだな』とか、少し違った見方で楽しむことができるようになります。


まとめ

①電磁石を用いる理由:
磁束密度を高められる
磁束密度が制御できる

②導線のねじれ対策:
スリップリング、ブラシの使用

③磁束密度分布:
正弦波波形(界磁巻線の巻き方を工夫)

④回転速度と磁極と周波数の関係:


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