分野:電力工学

単位法・%Z法とは?

電力系統において電圧電流などを計算するとき、通常の回路計算と同様に電圧をV(ボルト)、電流をA(アンペア)、インピーダンスをΩ(オーム)、電力をVA(ボルトアンペア)の単位のままで計算しようとすると、非常に手間がかかります。
そこでこれら4つのパラメータにそれぞれ基準となる値を定め、その基準値に対してどの程度の割合なのかを表す方法が単位法パーセントインピーダンス法(以下、%Z法と書きます)です。
例えば基準電圧を200Vと定めたとき、180Vの電圧は、単位法では180/200=0.9と表され、%Z法では180/200×100=90%と表されます。

このように割合で表すことのメリットの一つとして、計算で桁を間違えた場合に気付きやすいという点があります。
本来10,000Vとなるべきところを100,000Vという計算結果が出ても、なかなか間違いに気付きにくいですよね。
しかし本来100%となるべきところを1,000%とか10,000%という計算結果が出た場合、明らかに何かおかしいと気付くことができます。

しかしそれよりもさらに重要な、最大のメリットがあります。
それが先ほども述べた通り、計算の手間がかなり省けるということです!


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オーム法は本当に手間なのか?

それでは、従来の回路計算のようにV(ボルト)、A(アンペア)、Ω(オーム)、VA(ボルトアンペア)の単位を用いたオーム法による計算が、どれほど手間なのか考えてみましょう。

下の図のような理想変圧器を持つ回路について考えます。


巻数比n:1なので、当然ですがE1=nV2、I1=I2/nが成り立ちますね。
負荷のインピーダンスZですが、一次側から見るE1=Z'I1より、


となります。
つまり変圧器を介すると、インピーダンスの大きさが変わって見えるという厄介な性質があるのです。

とはいえこの程度の計算ならば大して手間とは言えませんよね。
しかし実際の電力系統を考えてみれば分かる通り、複数台の変圧器が存在します。
そして変圧器を介する度にインピーダンスの値を変換してやる必要があるので、計算が面倒になりそうなことはなんとなく予想がつきますよね。

例えば理想変圧器が3台存在する回路を考えてみましょう。


少しでも計算が楽になるように行列で考えてみます。
理想変圧器の一次側・二次側の電圧や電流の関係式は、先ほども述べた通りE1=nE2、I1=I2/nとなります。
これを行列で表せば、


となります。
これが3台連なっているので、


となることが分かるでしょう。
したがってE1=n1n2n3E4、I1=I4/(n1n2n3)となるため、送電端から見た受電端の負荷のインピーダンスは、


と表されます。
送電端の電圧V1が分かっている場合、送電端に流れる電流I1は、



と求められます。
送電端の電圧E1と電流I1さえ分かれば、各部の電圧や電流ゴリゴリ計算すれば求められます。

例えば各値が下の図に書いたような値の場合、電流I1は、

I1 = 1800 / {1×(5×3×2)^2} = 2 [A]

となります。


そして例えば2台目の変圧器の二次側に流れる電流I3は、


の関係式から、四端子行列の逆行列を左からかけることで、


となるので、I3 = 15×I1 = 30 [A]と求められます。

このように、系統内の変圧器の台数が増えるほど計算の手間が大きくなることが分かると思います。
しかしこの程度ならまだなんとかなるレベルでしょう。

さらに本物に近い回路だと・・・

さらに本物の電力系統に近い回路を考えましょう。
電源、変圧器、負荷送電線配電線で繋がっています。
そしてその送電線配電線にはインピーダンスが存在し、そこでの電圧降下も考慮する必要があります。
その状況を回路に表すと下図のようになります。


送配電線のインピーダンスと理想変圧器を合わせたものを下の図のように四端子回路の1つの単位とすれば、


その四端子行列は、


となります。
図ではこれが3つ接続されているので、


となり、1行2列目成分が非常に複雑になることが分かります。
当然ですが、変圧器の数が増えれば増えるほど、どんどん複雑な計算をしなければならないことは明らかでしょう。

そして送電端の電圧と電流が分かったら、また複雑な四端子行列に対して逆行列を計算しなくてはならないので、かなり手間がかかることが分かると思います。

これを一気に簡単にしてくれるのが単位法または%Z法なのです。

具体的には次回の記事で解説します。


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