分野:電力工学

電圧と電流を基準値で割ってみる

前回の記事では、電力系統の計算をする上で、オーム法は非常に煩雑な計算を要するので適していないということを説明しました。
今回はその解決策として広く用いられている単位法および%Z法(パーセントインピーダンス法)について説明します。
前回説明したように、単位法では電圧、電流、電力、インピーダンスの基準値を定めて、その基準値に対する割合で表示する方法でした。

下の図においてオーム法で計算しようとすると、何度もインピーダンスの変換をしなくてはならず非常に手間がかかるという話でしたね。


そして、送電線または配電線理想変圧器の組み合わせを四端子回路の1つの単位として考えると以下の式が成り立つこともお話ししました。



したがって、上の式における一次側の電圧E1と電流I1、二次側の電圧E2と電流I2をそれぞれ、基準値E1b、I1b、E2b、I2bで割ると、


となります。この式を変形すると、


となり、これが先ほどの、


という式と等しくなるので、ここからA、B、C、Dを求めることができます。

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A、B、C、Dを求めてみる

A、B、C、Dを一つずつ求めてみましょう。
まずは簡単なCから。


より、C = 0となります。

続いてAですが、


となります。

ここで一次側の電力の基準値S1b=E1b×I1b二次側の電力の基準値S2b=E2b×I2bとおきます。
そしてここが重要なのですが、一次側と二次側の電力の基準値が等しい、つまりS1b=S2bとおいてやれば、E2b = E1b / nを用いて、


となるので、A = 1となります。

そしてDですが、Aのときと同様の考え方で、


から、I2b = nI1bを用いて、


となってD = 1となります。

そして最後にBについてですが、


なので、I1bが消えて、



となります。
I2b = nI1bなので、


となるため、B = Z × I1b / E1bとなります。

つまりどういうことかというと・・・

四端子定数が定まり、以下の式が成り立つことが分かりました。


これは非常に重要な意味を持っていて、冒頭で送電線または配電線理想変圧器の組み合わせを1つの四端子回路と考えたときに、


という式が成り立つという話をしましたが、これと先ほどの式を比較すればn = 1として、インピーダンスをZからZ × I1b / E1bに置き換えたものと等しいことが分かります。

つまり、理想変圧器の巻数比が1:1であるかのように扱うことができるということです!
これがどれだけ素晴らしいことかは言うまでもないと思いますが、巻数比が1:1ならば一次側と二次側で電圧や電流の大きさが変わらない、つまり変圧器が無いものと同然として考えることができるわけです!
これで面倒なインピーダンスの変換作業をしないで済むと言うことです。

また、インピーダンスについてもZからZ × I1b / E1bに変わっていますが、これは書き方を変えればZ / (E1b / I1b)となります。
この分母の値基準電圧E1b÷基準電流I1bなので、オームの法則E=ZIから、まさに基準インピーダンスZ1bであることを示しています。
つまり、インピーダンスZは、基準インピーダンスZ1bに対する割合(Zp.u. = Z / Z1b)で表したものに置き換えることができるということです!

つまりこれらを踏まえると、回路は以下の図のように描き換えられるということになります。


だいぶ簡略化されたことが一目で分かるでしょう!

今回の記事では、電圧や電流の基準値を決めてあげて、一次側と二次側の電力の基準値を等しい(S1b=S2b)と置いてあげることで、インピーダンスもその基準値で割ったものとして取り扱うことができる、ということを説明しました。

世の中には単位法の定義は載っているが、なぜ成り立つかについては全く言及していない参考書やウェブサイトしか存在しません。
本記事で単位法に関する理解を深めていただければ幸いです。


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