距離÷時間で求まるのは平均速度
電気理論の解説に本格的に入る前に、必要な数学の解説をしておきます。
今回は『微分』について考えましょう。
今回は『微分』について考えましょう。
微分・積分と言えば高校の数学でも最も難解な分野の1つというイメージを持っている方も多いかと思いますが、分かってしまえば実に簡単で、しかも電気工学の理論を考える上で非常に重要な数学テクニックです。
まずは簡単な例で考えてみましょう。
ある地点からスタートして4時間後に20km先のゴール地点に到達したとすると、その速度は5km/h(km/hはキロメートル毎時、つまり時速)ですよね。
小学校で覚えた「はじき」(速さ・時間・距離の頭文字)の関係を使えば距離÷時間=速さなので、20km÷4時間=5km/hとなります。
これをグラフにすると以下のようになります。
直線の傾きが5km/hなので、ずっと5km/hの速度で歩くと、4時間後に20km先のゴール地点に到達する、ということをこのグラフは表しています。
しかし、このグラフからは1時間後に5km先の地点に、2時間後に10km先の地点に到達していることも読み取れますが、これは果たして正しいのでしょうか?
結論から言えば正しくありません。
問題文には「4時間後に20km先の地点に到達した」としか書かれていないので、もしかすると序盤は上り坂がきつくて1時間後に3kmしか進まないかもしれないし、逆に下り坂なので8kmも進んだかもしれません。
つまり下の図のように、スタート地点とゴール地点を結ぶ線は無数に考えられるのです。
つまり下の図のように、スタート地点とゴール地点を結ぶ線は無数に考えられるのです。
そして先ほど求めた5km/hという速度は、あくまでスタート地点とゴール地点だけに着目したときの『平均速度』でしかないのです。
車で言えば、スタート時とゴール時のメーター数の差を、かかった時間で割ったものに等しいのです。
瞬時速度を求めたい
それでは、車のスピードメーターのように、ある瞬間における速度、つまり『瞬時速度』はどのように求めたら良いのでしょうか?
例えば下の図において、スタート時から2時間が経過した瞬間に、どの程度の瞬時速度で歩いているのかを求めましょう。
距離をx [km]、時間をt [h]として、このグラフはx = f(t)という関数で表されるとします。
つまりt = 0でx = f(0) = 0、t = 4でx = f(4) = 20ということになります。
2時間経過後、つまりt = 2 [h]のときの瞬時速度v [km/h]を求めるために、ごくわずかな時間変化であるΔt [h]を導入します。
これで瞬時速度が求められた、と思いたいのですが、数学の世界はご存知のように厳密さが求められます。
つまり速度を求めた点付近を拡大すると下の図のようになり、瞬時速度ではなくまだまだ平均速度を求めていたに過ぎないのです。
つまり速度を求めた点付近を拡大すると下の図のようになり、瞬時速度ではなくまだまだ平均速度を求めていたに過ぎないのです。
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微分とは?
それではいったいどうやって瞬時速度を求めればよいのでしょうか。
数学的に厳密に瞬時速度を求めるための道具が『微分』です。
先ほどの式、

が瞬時速度を表さなかった理由は、Δtがわずかではありますがまだ幅を持っているためでした。
それでは思い切ってΔtを限りなくゼロに近づけてみましょう!
ゼロではないが限りなくゼロに近く幅を持たないような極限の状態を考えるのです。
そうすれば下の図の青い点は赤い点に限りなく近づいていくので、その傾きは赤い点における接線の傾き、つまり瞬時速度の値に限りなく近づくということになります。
これがt = 2における瞬時速度の定義です。
より一般化すると、時刻t [h]における瞬時速度v(t) [km/h]は、
のように定義されます。
このf(t)からf’(t)を求める数学的な操作を『微分』といい、今回の場合は『f(t)をtで微分する』と言います。
ここまでは分かりやすい例として距離・時間・速度について考えましたが、電気工学でもあらゆる場面で使われます。
電気工学に出てくる物理量のほとんどは距離x、y、zや時間tの関数なので、微小な距離dx、dy、dzまたは微小な時間dtだけ変化したときの、物理量の変化の勢いを考える際などに微分はよく使われます。
これで微分の意味や定義は分かりましたが、実際のあらゆる関数に対してどのように計算するのか、というのが最も興味のある部分ですよね。
あらゆる関数を微分する
それでは様々な関数を微分してみましょう。
といっても、定義式を元にいろいろな関数の微分を計算したところで何も面白くありませんので、ここでは電気理論で使うような代表的な関数の微分の結果だけを書いておきます。
電験では暗記しておかなければならない関数ばかりですので、この機会にぜひ暗記しましょう。
【n次関数】
f(x) = x^n ⇒ f'(x) = nx^(n-1)
【三角関数】
f(x) = sin ax ⇒ f'(x) = a cos ax
f(x) = cos ax ⇒ f'(x) = -a sin ax
【指数関数】
f(x) = exp [ax] ⇒ f'(x) = a exp [ax]
【対数関数】(底はe)
f(x) = log ax ⇒ f'(x) = 1 / x
まとめ
①微分とは:
ある関数の接線の傾き
②電気理論における微分:
ある物理量の変化の勢いを表す
③あらゆる関数の微分:
【n次関数】
f(x) = x^n ⇒ f'(x) = nx^(n-1)
【三角関数】
f(x) = sin ax ⇒ f'(x) = a cos ax
f(x) = cos ax ⇒ f'(x) = -a sin ax
【指数関数】
f(x) = exp [ax] ⇒ f'(x) = a exp [ax]
【対数関数】(底はe)
f(x) = log ax ⇒ f'(x) = 1 / x
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